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Green Vein ( 2025 )

東京・代官山の一角に佇むマンション住戸の改修計画である。
クライアントは、ファッションやオーディオ、アンティーク家具など文化的カルチャーへの深い造詣を持ち、それらの嗜好を包括する住空間を求めていた。

まず可能な限り既存の仕上げ材を取り払い、部分的に躯体のコンクリート素地を現しとした。また、新たに挿入する素材にはモルタルやステンレスなど素地そのままを採用し、装飾性を排して空間の構成に静かな強度を与えている。

そのうえで空間を象徴づけるアイコンとして、緑色のマーブル模様を湛えた花崗岩を要所に配置した。
この石材は、予めそこに存在していた建物の構造体と、計画的に設えられた新たな素材、そして施主が長年収集してきた家具や英国製ツイードジャケットといった物質が持つ芳醇な質感──これらの異なる時間軸と質の対比を結びつける“媒介”を意図している。

また、既存の北向きガラスブロックから差し込む柔らかな自然光の印象を部屋全体に拡張するため、壁の塗装には微かに緑のトーンを加えている。それにより、花崗岩が受けた光が穏やかに反射し、空間全体を静かに染めていくような効果を生んだ。

素材と光、多層の時間が交差するこの空間は、日々の暮らしの機微をも受け止める余白を残す。都市の多様な気配に包まれた環境において、暮らしに必要な安らぎを確保することを意識し、静けさと個の美意識を守る居場所としての空間を目指した。

Construction 株式会社ルーヴィス

Photo Nobutada Omote

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©2025 SAHORI OHSAWA Architects

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